(1) | 精巣炎は、ほとんどが流行耳下腺炎いわゆる"おたふく風邪"に伴って起こります.
思春期以降の流行性耳下腺炎の約20%に合併し、耳下腺炎発症の3〜5日目に痛みを伴って精巣が腫れてきます。
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(2) | 精巣上体炎は、尿道や前立腺の炎症が精管を伝わって、精巣上体まで及んだ時に発症します.痛みを伴う陰嚢部の腫脹で,発熱を伴い急激に発症することが多いのが特徴です.精巣の下側や側に接して硬いシコリが触れ、圧痛が著明です。
尿道から細菌が入り込むのが原因ですが、尿道炎の症状が現れないことが多いようです。性行為感染症のクラミジアも精巣上体炎で発症することがあります。また、症状に乏しく精巣上体に無痛性の硬結を触れるときには,結核性の炎症も考えなくてはなりません。
超音波検査で、正常な精巣と血流が増加している腫大した精巣上体が観察されます。
治療は、抗生物質や抗菌剤の投与を行います。また陰嚢を持ち上げて冷やし、安静にしていることが勧められます。淋菌やクラミジアが原因の場合には、性的パートナーの治療も必要ですし、治療は中途半端にせず感染が完全に治るまで続けることが大切です。
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(3) | 精巣捻転は,精巣が精索を軸として回転し,血管が締め付けられるため,精巣が壊死を起こす病気です.青少年に多く,寝ているときに発症することが多いのが特徴です.思春期の男子が「早朝,時々,下腹部や陰嚢部が痛くなる」というのは,その前兆です.激しい精巣部痛で始まり,次第に陰嚢内容が腫脹してきます.悪心や嘔吐を伴うこともあります.
6〜8時間以内に元に戻さないと睾丸がだめ(壊死)になってしまうので,早く診断して手術しなければなりません.
診断は、触診だけでは難しい場合が多く、超音波検査で、捻れてダルマ状になった精巣と精索を描出し、精巣への血流が消失していることを確認します。精巣上体炎や精巣垂あるいは精巣上体垂捻転との鑑別が必要ですが、実際にはなかなか困難で、手術で確認することもあります。
治療は、手術により、捻れた精索を戻して血流を回復させ、精巣を陰嚢に固定します。精巣への血流が絶たれてから時間が経ちすぎ精巣が壊死に陥っている場合は、精巣を摘出します。思春期やそれに近い年齢の男子が下腹部や陰嚢部を痛がった時には、精巣捻転の可能性も考え、学校に行くよりもまず泌尿器科を受診してください。
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(4) | 精巣垂捻転、精巣上体垂捻転は、精巣や精巣上体にある小さな突起が捻れて,腫れてきた場合です。これらは精巣捻転とは違って手術の必要はありません。 触診だけでは精巣捻転との鑑別は困難です。超音波検査では、精巣や精巣上体の形状と血流は正常で、精巣や精巣上体に接して血流のない腫瘤が描出されます。
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(5) | 精巣外傷は、陰嚢部を蹴られたり,野球のボールが精巣に当たったりした時に起こります.
疼痛が激しく,悪心や嘔吐があり,ショックとなることもあります.超音波検査では、正常な形状の精巣は見られず断裂した白膜が描出されます。
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