女性に多い尿失禁の話 (ミストレンド)



   何かの拍子に「オシッコをチビッちゃった」という経験はありませんか. 知らないうちに,また自分の意志に反して尿を漏らしてしまう状態を, 尿失禁といいます.尿失禁は女性に多く,健康な日本人女性の30〜45%が, 何らかの尿失禁を経験しているといわれています.
   尿失禁には幾つかのタイプがありますが,女性に多いのが腹圧性尿失禁です. 咳やクシャミ,笑ったり,重い物を持ったり,お腹に力が入る動作を行ったときに 尿が漏れてしまうタイプです.膀胱や尿道を支える骨盤底筋群や尿道括約筋の 収縮力が弱くなり,急に腹圧が上昇したときに尿を漏らしてしまいます.
   尿失禁が女性に多いのは,尿道が男性に比べて短く骨盤底筋群の発達が弱い上, 妊娠や出産がこれらの筋肉に負担をかけるためです.肥満や便秘も尿失禁の誘因と なります.閉経後は女性ホルモンの分泌量が減るため,尿道粘膜の弾性が失われ, 尿道をふさぐ働きがさらに弱まります.
   尿失禁は致命的な病気ではありませんが,日常生活の質,QOL(quality of life)を 大きく損なわせます.スポーツや人前に出るのに消極的になり,臭いも気になり, 不快な日常生活を送ることになってしまいます.
   腹圧性尿失禁の治療ですが,骨盤底筋を鍛える体操を正しく3ヶ月間以上続けると, 8割以上の人で症状が改善するといわれています. 中断すると鍛えた筋がまた弱くなってしまうので,継続することが大切です. 膀胱の筋肉を緩める薬や,尿道括約筋の収縮力を強める薬も補助的に使います. それでも改善しないときには手術療法が必要です.
   恥ずかしがらず,諦めず,泌尿器科を受診してみてください.

− ミストレンド、2001年6月号に掲載 −

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