石があるって言われたら!?(尿路結石症)(AKTテレビ)



尿路結石症とはどんな病気?
尿路結石症とは「尿路」に石ができる病気です。エジプトのミイラの膀胱からも結石が見つかっており、 大昔から人類を苦しませていた病気の一つです。将来、人類が宇宙で活動するようになると、無重力の影響で骨の成分が血中に溶け出し、尿路結石が増加するとも予測されています。NASAの宇宙飛行士の数人が、シャトルの中で結石による疼痛発作を経験しているそうです。
尿路結石は結石のある場所によって、腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石などと呼ばれていますが、ほとんどは腎臓で作られ尿路に落ちてきたものです。

尿路結石症の症状は?
症状は、結石の大きさや場所によって違います。全く症状がないこともあり、silent stone「沈黙の石」と呼ばれます。尿管結石では、「疝痛発作」といって激しい痛みが出ることがあります。尿は濁り血尿になります。冷汗や吐き気を伴い、腸閉塞や虫垂炎と間違われることもあります。 石が尿を堰き止めると、腎臓が腫れ、時に高い熱が出ます。

尿路結石症の頻度は?
食生活の欧米化に伴い頻度は増えてきています. 一生のうち、100人中4〜5人が尿路結石にかかるといわれ、20〜40歳代の男性に多い(女性の約2倍)といわれています。

なぜ、尿路に石が出来るの?
代謝異常や薬が原因で、石が出来ることもありますが、多くは原因不明です。尿中のカルシウム、蓚酸、リン酸、尿酸などは、尿が濃くなると結晶をつくりやすく、その結晶が固まって大きくなったものが結石です。 「シュウ酸カルシウム結石」が70〜80%と最も多いですが、尿酸値が高い人は「尿酸結石」が出来やすいので注意が必要です。

尿路結石が出来やすい人は?
(1)水をあまり飲まずいつも尿が濃い人、(2)食べ物の好き嫌いが多い人、(3)動物性蛋白、脂肪、糖分を多く摂る人、(4)汗をいっぱいかくような、暑いところで仕事をしている人、(5)精神的ストレスが多い人、 (5)尿路感染や尿流に停滞がある人、などに石が出来やすいといわれています。

尿路結石症の診断は?
(1)尿検査、(2)X線検査、(3)超音波検査、(4)CT検査などで診断します。 最近は、人間ドックや内科検診の超音波検査で、結石が見つかることが多くなっています。

尿路結石症の治療は?
(1)保存的治療法:水・運動療法
(2)積極的治療法:
(a)体外衝撃波砕石術(ESWL)
(b)内視鏡手術(PNL、TUL)
(c)開放手術

(1)保存的治療法: 1cm以下の小さな石は自然に出る可能性があります。水運動療法といって、水をいっぱい飲んで上下に跳ねる運動を行います。うまくいくと、排尿時に尿と一緒に石が出ます。 石が出る時は激しい痛みを伴うことが多いので、痛み止めや石を出やすくする薬を服用しながら行います。水分摂取としては、水道水、麦茶、番茶、ほうじ茶などが勧められます。煎茶、コーヒー、紅茶などには結石の成分となるシュウ酸の含有量が多く、清涼飲料水や甘味飲料は尿中へのカルシウム排泄量を多くし、結石が出来やすくなるので飲み過ぎには注意して下さい。

(2)積極的治療法: (a)体外衝撃波砕石術(ESWL)は、体の外から衝撃波エネルギーを結石に当て、石を小さく砕いて尿と一緒に排出させる方法です。 (b)経皮的腎砕石術(PNL)は、背中側から腎臓に小さな孔をあけて内視鏡を挿入し、内視鏡で見ながら石にレーザーや超音波などを直接当て、砕石・除去する方法です。経尿道的尿管砕石術(TUL)は、尿道から尿管内に内視鏡を挿入して砕石する方法です。 (c)開放手術は背中やお腹を切る手術で、以前はこの方法が主体でしたが、現在では第一選択の治療法ではありません。

水を飲んで運動するだけで石が出るの?
5mm以下の小結石は、1か月以内に約70%、3か月で約85%、6か月で約90%が自然排出され、5〜10mm程度の結石も、1か月以内に約25%、3か月で約60%、6か月で約80%が自然排出されるといわれており、 1cm程度の石までは保存的に出る可能性があります。しかし3〜6ヶ月たっても石が出ず、痛みや熱が続く時は、結石を取り除く治療を行います。

尿路結石がある人は、ビールを飲めば良いと聞いたことがあるのですが?
それは間違いです。以前はビールを飲んで「尿量を多くすれば結石ができにくく、出来ても自然に出やすくなる」という考えもありました。しかし、ビールもアルコールなので、量を多く飲んだ後は脱水になりやすく、尿が濃くなります。またビールはプリン体含有量が多いため、尿酸結石の原因にもなります。ビールの多量摂取は控えましょう。やはり一番いいのは「水」です(水道水、麦茶、番茶、ほうじ茶など)。 食事以外に1日2000cc程度の水分を補給してください。

尿路結石がある人は、牛乳を飲むのを控えめにした方が良いと聞いたことがあるのですが?
それも間違いだと分かってきました。尿路結石のある人には尿中カルシウム値が高い人が多く、再発予防の目的でカルシウムの摂取制限が行われてきました。しかし、カルシウムは腸管内でシュウ酸と結合して便として排泄されるので、カルシウムを多く含む牛乳は、シュウ酸が体内に吸収されて尿中に排出されるのを減少させる効果があるからです。

薬で石を溶かすことは出来ないの?
尿酸やシスチン結石など、特殊な石は薬で溶かせます。しかし、ほとんどの石は、残念ですが薬では溶けません。

尿路結石症の予防は?
尿路結石は再発しやすい病気ですが、生活の工夫と心掛けで、結石の予防や再発防止ができます。

<食生活での注意点>
@水分を十分に摂る。
A食事はバランス良く規則正しく摂る。
B動物性蛋白を摂り過ぎない。動物性蛋白質を取り過ぎると、結石の生成を抑制するクエン酸の尿中排泄量が減少し、結石ができやすくなります。
Cカルシウムはしっかり摂る。尿中にシュウ酸が多いと尿中のカルシウムと結合して、シュウ酸カルシウム結石が出来やすくなります。シュウ酸を多く含む食物を食べる時に、同時にカルシウムを含む食物を摂ると、腸管内でシュウ酸とカルシウムが結合して、シュウ酸カルシウムが便の中に排泄されるので、尿中に排出されるシュウ酸を減少させることができます。「ほうれん草のおひたしに鰹節をかける」のは、確かに理にかなっているわけです。
D脂肪は少なめに。脂肪を多く摂取すると、腸管内で脂肪酸がカルシウムと結合し、シュウ酸と結合するカルシウムが減少してしまいます。そのため、腸管内にシュウ酸が増え、尿中へのシュウ酸排泄も増加します。
E野菜、海草、青身魚を適度に摂る。マグネシウムは結石が出来るのを防ぐ働きがあり、野菜、大豆、海草類に多く含まれています。またクエン酸も結石生成を抑えますが、アルカリ性の野菜は、体の酸性化を防いで尿中のクエン酸排泄量を増やします。しかし、野菜だけではシュウ酸の摂り過ぎにつながるので、カルシウムを含む食物を一緒に食べましょう。また、青身の魚も結石予防に有効といわれていますが、食べ過ぎは逆効果となります。
FビタミンCは摂りすぎない。ビタミンCは体内で代謝されてシュウ酸を作るので、長期間ビタミンCを摂りすぎると、尿中へのシュウ酸排泄が増加し、結石ができやすくなります。
G塩分、砂糖は摂りすぎない。塩分や砂糖は、尿中のカルシウム濃度を上げるので、摂り過ぎには注意しましょう。清涼飲料水や甘味飲料も要注意です。

<食事以外での注意点>
適度な運動を行い、汗をかいた後は水分を十分補給する。そして、ストレスを解消して十分な睡眠をとり、精神的な余裕を持つことが大切です。
就寝直前には食事をとらないことも大切です。食事で摂取したカルシウムやシュウ酸の尿中排出は、食後2〜3時間で最大になりますし、また就寝中は尿が濃縮されるため、就寝前に食事を取ると結石が出来やすくなります。

尿路結石に関して、その他に気をつけることは?
人間ドックや内科検診で「腎臓結石がある」といわれた場合、治療方針を立てるためにも、一度は泌尿器科専門医で診察を受けて下さい。また、尿路結石は再発しやすい病気です。 再発防止や早期発見のためにも定期的な検診が必要です。医師の指示に従って検診を受けて下さい。何もいわれなくても、3〜6ヶ月に1度は検診を受け、結石再発の有無を確認しましょう。


― AKTテレビ、Dr.I、(2002年2月放送)を改変(2005年8月)―

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