過活動膀胱(overactive bladder: OAB) |
過活動膀胱(overactive bladder: OAB)とは、急に尿がしたくなり我慢が出来なくなる(もれそうになる)感じ(尿意切迫感)を起こす病気です。尿意切迫感が強いと、我慢できずに尿をもらしてしまうこと(切迫性尿失禁)もあります。また日中や夜間の排尿回数が多くなります(昼間頻尿・夜間頻尿)。 <疫学> 日本排尿機能学会の調査(2003年)では、40歳以上の12.4%(810万人)にOABの症状があり、その約半数の人に尿失禁があるといいます。症状のある人の割合は年齢とともに増え、80歳以上では35%以上にもなります。また、40歳以上の女性500人の調査(2004年)では20%にOABの疑いがあり、何らかの日常生活活動に制限を受けているといいます(外出時常に不安を感じる 50.5%、就寝中にトイレに目覚めるため睡眠不足 44.6%、趣味やレジャーなどやりたいことに制限 29.7%、人と会ったり団体行動を避ける 29.7%など)。 OAB患者の53%が日常生活に支障を感じているにもかかわらず、医療機関受診率は18%程度だといいます。 <病因> OABは膀胱が勝手に収縮する排尿筋過活動を示唆していますが、その病因はいろいろで、排尿をコントロールしている神経経路の障害で起こる神経因性OABと、非神経因性OABに分けられます。 神経因性OAB:脳血管障害、パーキンソン病、脳腫瘍、脊髄損傷、多発性硬化症、脊柱管狭窄症、変形性脊椎症など、脳や脊髄にトラブルがあると、膀胱を支配する神経が思うように働かなくなり、OAB症状が出現します。 非神経性OAB:@前立腺肥大症の50〜75%、A加齢とともに増加、B女性の骨盤底の脆弱化(出産経験のある人や肥満気味の人、腹圧性尿失禁患者の44%にOAB合併)、C特発性(女性に多い)。 <診断> 過活動膀胱の診断は、自覚症状で行われます。尿意切迫感が必須(週1回以上)です。頻尿(8回以上)・夜間頻尿(1回以上)を伴うことが多いですが、切迫性尿失禁はあってもなくてもかまいません。過活動膀胱症状質問票が一般に用いられています。 OABの診断では、OABと同じ症状を来しうる、他の疾患を鑑別除外することが必要です。膀胱癌、膀胱結石、間質性膀胱炎、前立腺癌、細菌性膀胱炎、前立腺炎、尿道炎、多飲、多尿、心因性頻尿などがないことを確認しますが、検尿、血液検査(PSA、腎機能検査)、超音波検査程度で良く、難しい検査や痛い検査は必要ありません。専門的検査としては、ウロダイナミクス検査(尿流動態検査)や内視鏡検査などがありますが、通常の診療ではそこまでの検査は要求されません。 <治療> OABの治療は、抗コリン薬(膀胱収縮を抑える)の服用が中心ですが、かなり有効です。口渇、便秘、物がかすんで見える、めまいなどの副作用が出る場合がありますが、それほどひどい症状にはなりません。また、膀胱訓練や骨盤底筋体操などのトレーニングとの併用も有用です。 |